技術士には種類がある?
技術士は、それぞれの専門分野に応じた部門というカテゴリーがあります。さらに、それぞれの部門は、さらに細分化された科目というカテゴリーに分かれます。
例えば、「私は土質調査をやっているから、建設部門の土質及び基礎だ。」「私は地すべり調査をやっているから、応用理学部門の地質だ。」といった感じです。ここで、「土質及び基礎」「地質」が科目にあたります。
20の技術部門
部門は、文部科学省令で定められています。部門は全部で21部門あるのですが、そのうちの20技術部門は、以下の通りです。
- 機械部門
- 船舶・海洋部門
- 航空・宇宙部門
- 電気電子部門
- 化学部門
- 繊維部門
- 金属部門
- 資源工学部門
- 建設部門
- 上下水道部門
- 衛生工学部門
- 農業部門
- 森林部門
- 水産部門
- 経営工学部門
- 情報工学部門
- 応用理学部門
- 生物工学部門
- 環境部門
- 原子力・放射線部門
それぞれの部門に、科目が1~11個あります。ご自身の業務内容に近い部門・科目は、見つかりましたか?
部門と科目を選んだら、自分の専門とする事項(分野)を自分で申請して、受験をします。専門とする事項は、自分の言葉で考えて申請することができます。説明をすると長くなってしまいますので、ここでは割愛させていただきます。科目と専門とする事項 をもっと詳しく知りたい方は、日本技術士会のWebページでご確認ください。
総合技術監理部門とは
高い専門性と倫理観を持ち、業務を俯瞰的に見て、さまざまな方向から業務の課題・問題点を考えて、全体のバランスを見ながら業務を遂行する能力を有する技術士として、総合技術監理部門が設置されました。(略して総監と呼んでいます。)
言い換えますと、総合技術監理部門の技術士には、会社を存続させて、従業員の生活を守りながら、かつ、環境や国際社会との関係も考慮して業務を進めます。その中で、発生するトレードオフを解決することが求められます。トレードオフとは、何かを達成しようとすれば、別の何かを犠牲にしなければならない関係のことです。
総合技術監理部門の技術士は、会社の経営者や管理職のような立場・視点で、会社を維持するために5つの管理を駆使して業務を遂行します。5つの管理とは、経済性管理、人的資源管理、情報管理、安全管理、社会環境管理のことです。業務を行なっていると、これらの管理の間でトレードオフ問題が発生します。
総監技術士の視点からみた、トレードオフ問題の例を2つ紹介します。
1つ目は、経済性管理と社会環境管理のトレードオフです。 業務を仕様を満たすため、ある薬品Aを使用する(経済性管理)ことにしました。しかし、薬品Aに含まれる一部の成分が、水質の環境基準の項目に含まれている(社会環境管理)というトレードオフが生じました。そこで、①薬品Aを含む廃液を、産業廃棄物として適切に処理する、もしくは②薬品Aではなく代替の薬品を探す必要があります。
2つ目は、安全管理と人的資源管理のトレードオフです。水質やガスを分析する業務では薬品や高圧ガスを使用するため、薬傷や酸欠などの労働災害の恐れ(安全管理)があります。しかし、分析従事者を育成(人的資源管理)するためには、初心者でも薬品や高圧ガスを使用しなければなりません。薬品や高圧ガスを使用しないと、分析業務の従事者がいなくなるというトレードオフ問題が発生します。そこで、安全対策を行ないながら、人材教育をする必要があります。
このようなトレードオフ問題を解決して、業務をバランスよくまとめて遂行する能力を持つ人が、総監技術士なのです。総監技術士は、20の技術部門の技術士に合格した人が取得できる資格です。そういう意味では、20の技術部門の上位の資格として位置付けられています。
1人で複数の技術士資格を取れる!
技術士って、1人でいくつもの部門・科目を持つことができるんです。例えば、トンネルの設計をしている人が建設部門に合格したとします。その人が周辺環境(植生や野生生物など)に配慮した設計なども行なっている場合は、環境部門での受験も可能です。さらに、20の技術部門の技術士ならば、総合技術監理部門の受験も可能です。
私は、応用理学部門と総合技術監理部門の2つの技術士資格を持っています。2つ、3つの技術士資格を持っている人は、多いです。なかには、8つや9つの部門を持っている技術士もいますよ。