令和3年度技術士第一次試験 適性科目「Ⅱ-10」の解説

令和3年度技術士第一次試験 適性科目Ⅱ-10は『Guide 51

このブログでは、令和3年度技術士第一次試験の適性科目の問題や選択肢を少し深堀りして、第一次試験の試験対策だけでなく、第二次試験の筆記試験や口頭試験の対策にもなるような解説を目指してみたいと思います!

今日は令和3年度技術士第一次試験 適性科目「Ⅱ-10」を解説します。

適性科目「Ⅱ-10」は、ISO/IEC Guide51(JIS Z 8051)の「規格に安全側面(安全に関する規定)を導入するためのガイドライン」に関する問題でした。

ISO/IEC Guide51(JIS Z 8051)

ISO/IEC Guide51(JIS Z 8051)とは、国際標準化機関(ISO)と国際電気標準会議(IEC)が合同で作成した規格です。安全に関する規定を導入するためのガイドラインとして作成され、国内ではその第2版が2004年にJIS化されました。

ISO/IEC Guide51では、安全の定義が「安全=受容できないリスクがないこと」として定められています。

つまり、安全とは許容できるリスクはあるということなので、安全の概念にはある程度のリスクを含むということになります。リスクゼロではないということですね。

このISO/IEC Guide51(JIS Z 8051)では、設計段階で取られるリスクの低減の方策が記されています。

リスクを低減する際の優先順位は

  • ステップ1 本質的安全設計
  • ステップ2 ガード及び保護装置
  • ステップ3 最終使用者のための使用上の情報

の順序になります。

設問では、このガイドラインを推奨する行動として誤っているものを選ぶようになっていました。問題文の要約を紹介します。詳しい問題文の内容は、日本技術士会が公表している問題をご参照ください。

(ア)回転ドアを設計する時に、施工主の要求仕様である「重厚感のある意匠」を優先し、リスク低減に有効な「軽量設計」は行わなかった。その代わりに、インターロックによる制御安全機能と警告表示でリスク軽減を図った。

令和3年度技術士第一次試験 適性科目「Ⅱ-10」より要約

リスク低減を行なう際の優先順位は、まず本質的安全設計です。この問題文では、「軽量設計は行わなかった」とありますので、誤りです。

(イ)建設作業用重機の本質的安全設計案が、リスクアセスメントの検討結果、リスク低減策として的確と評価された。しかし、わずかに計画予算を超えていたことから、ALARPの考え方を導入し、設計案の一部を採用しないで、代わりに保護装置の追加と警告表示と取扱説明書を充実させた。

令和3年度技術士第一次試験 適性科目「Ⅱ-10」より要約

ALARPとは、『リスクはコストが正当化される範囲でそのリスク低減をはかる努力をする』という原則です。この問題文では、予算をわずかに超えていたため設計案の一部を採用しない代わりに、保護装置の追加と警告表示と取扱説明書を充実させています。この対応は、ALARPの考え方に沿っているため、正しいです。

(ウ)某海外工場から充電式掃除機を他国へ輸出した。警告の表示は、明白で読みやすく、容易に消えなくて理解しやすいものとした。表記は、製造国の公用語だけでなく、英語も併記した。

令和3年度技術士第一次試験 適性科目「Ⅱ-10」より要約

この問題文では、ステップ3の最終使用者のための使用上の情報について、丁寧に対応していると思われます。そのため、正しい対応です。

(エ)介護ロボットの製造販売で、「警告」には警告を無視した場合の製品ハザード、そのハザードによる危害とその結果について、分かりやすく記載した。

令和3年度技術士第一次試験 適性科目「Ⅱ-10」より要約

この問題文を読む限り、製品にハザードがあることが明確です。そのため、まずは本質的安全設計でその製品ハザードをできる限り低減させること、次にガード及び保護装置を設置することが正しい対応の順序になると思われます。そのため、この対応は誤りだと思います。

(オ)ドラム式洗濯乾燥機の製造販売で、「取扱説明書」には使用者が適切な意思決定ができるように、必要な情報をわかりやすく記載した。また、万が一の製品の誤使用を回避する方法も記載した。

令和3年度技術士第一次試験 適性科目「Ⅱ-10」より要約

この問題文では、ステップ3の最終使用者のための使用上の情報について、丁寧に対応していると思われます。しかし、万が一の製品の誤使用を回避するためには、まず本質的安全設計、その次にガード及び保護装置することを優先した方が良いと思われます。そのため、この対応は誤りだと思います。

(カ)エレベーターの製造販売で、「取扱説明書」に推奨されるメンテナンス方法を記載した。メンテナンスの実施は納入先の顧客(使用者)が主体で行なう場合もあるため、その作業者の訓練又は個人用保護具の必要性についても記載した。

令和3年度技術士第一次試験 適性科目「Ⅱ-10」より要約

 この問題文では、ステップ3の最終使用者のための使用上の情報について、丁寧に対応していると思われます。そのため、正しい対応だと思います。

問題文(ア)から(カ)の正誤は、私の見解です。日本技術士会からは問題文別の正誤は公表されていませんのでご了承ください。

令和3年度技術士第一次試験 適性科目の問題と正答、及び、技術士倫理綱領は、日本技術士会のホームページに掲載されています。


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